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校庭芝生地化の課題

費用に対する課題

    現在校庭を芝生地化する場合5000㎡の校庭と仮定し、その内半分するとして2500㎡で1千万円から4千万円位かかります。これは現在のグランドの状態や、利用する側の要求するクオリティによって大きく変ります。また維持管理の費用も全面的に業者に委託するとしたら、150万円ぐらいはかかります。
これらの費用を全部自治体が負担するとしたら校庭芝生地化の事業は昨今の財政事情を省みると容易には進まないと思われます。しかし、文部科学省のエコスクールの事業になると国から1/3の補助が受けられます。またスポーツクジ(日本スポーツ振興センター)の補助事業に認定されますと90%の費用が補助されます。また、係る費用そのものを節約し、地域や、PTA、ボランティアの力を結集して施工すればずいぶん安く出来ると思われます。実際スポーツクラブが自らの力でサッカー場を芝生地化した事例もあります。
    私達(山口県造園建設業協会)は芝生のクオリティーは少し落ちる(多少の雑草や芝生の高さを高くする)けど、子供達が遊ぶには支障の無い芝生造成の手法を提案します。
今造成費用として1㎡当り4000円を目標に研究を重ねています。
又維持管理費を安く抑える為、土壌改良の方法や、芝草の種類の選定などさまざまな研究を積み重ねています。

技術的な課題 1

まず、芝生に付いてあまり詳しく知らない方はここを見てください
校庭を芝生地化するときの技術的に一番大きな問題は過度に利用される踏圧によるダメージです。この課題が解決できないと校庭芝生地化は推進できません。
1970年代に一時校庭の芝生化がされたことがありました。しかしその当時はこの踏圧による芝生のストレスを解消する方法が無く、利用を制限することで凌いでいましたが、この方法は本来の運動場の目的と相反する事になり一部過疎地域の学校を除いて校庭の芝生は無くなってしまいました。

この耐踏圧性を強くする方法

1.ダメージを弱くする。
        1 ある程度の利用制限 曜日等を決め制限する。
        2 利用方法の工夫 利用する場所を移動する。
        3 広い面積を芝生地化する。利用の分散
        4 芝生の刈高を高くし、クッション性を持たせる。
        5 芝生保護材の使用。グリーンプロテクター
2.ダメージからの回復を早める
        1 成長力の強い芝種を使用する。
        2 成長力を高める土壌改良を施す。
        3 特性の違う芝種を混植して使用する。
        4 緻密な維持管理作業をする。
        5 季節による回復力を平準化する。夏芝、冬芝の混植

解決策

   1-1 芝生の面積が児童1人当り15m2以上ないと自由に使用すると裸地化してしまう事が多いようである。 全国平均で見ると児童1人で26m2ぐらいのグランド面積になる。この面積が確保できない場合、隔日で使用する等の制限をせざるを得ない。
 
   1-2、5 球技等でいつも同じ場所を繰り返し繰り返し使用するとどうしてもそこだけ裸地化してしまう。ゴールポストの位置を変えたり、方向を変えたりする工夫が必要である。 又遊器具などは移動できないのでその下側はグリーンプロテクターを敷くなどの工夫が必要である。
 
   1-3 出来るだけ広い面積を芝地化する。児童が分散して遊ぶ事で過度の踏圧から芝が守られる。また全面的に芝地化した場合、競技にしようする場所の固定化が無くなり同じ場所ばかり過度に使用することが無くなる。
 
   1-4 芝生を高く(5cm)以上に育てる事により、芝生の成長点に対するダメージが和らぎ再生が早くなり結果的に強い芝生になる。また光が土まで届かずに雑草の発芽成長を妨害し、雑草も少なくなる。
 
2-1 特別に品種改良された芝生が出来てきている。それぞれの芝生の特徴は下記のリストを見ていただきたい。
   山口県の校庭芝生地化植栽試験ではこのうち エルトロ ひめの ティフトン セントオーガスチングラス(夏芝) ケンタッキーブルーグラス(冬芝) を使用した
2-2 基本的に芝生は少し乾燥した土壌で育成している。校庭芝生化でもこの点は非常に大事な事であるが、乾燥しすぎる事もまた注意が必要である。雨水を素早く排水する為には砂の床土が良いが、砂床土には保水機能が無い為、好天の日は潅水作業が欠かせない。また保肥力も無い為、施肥の回数も増える。
一般の校庭は地域の手軽に手に入る土壌で造成されているので、砂床土で校庭を造成するためには土の入替えを行う為の費用が相当かかるまた維持管理の潅水費用も嵩む。費用の点で砂床土の採用は難しい。
現地の土を利用する場合、運動場の土は普通カチカチに締め固められている。 雨水が地下に浸透する事はほとんど無い。

良好な芝生を育てる為には次の4の条件が満たされる土壌が必要である。
    1.適度な柔らかさ。 根が伸びていく為、雨水が適度に土中に入っていく為
    2.適度な保水能力。 維持管理作業の潅水を出来るだけ少なくる為
    3.団粒構造を自然に作らせる土。 丈夫で強い芝生にする為に
    4.踏圧によって固結しにくい土 適度に気層を保つ為
 
    1-1 良好な土壌では芝生の根は80cmぐらいまで伸びている。根茎の発達が芝生の丈夫さに大きく関係しているので、まずカチカチに固結した土壌を緩める事が非常に大切である。この時出てくる拳大以上の石は取り除く。また造成した後で土壌の不等沈下を防ぐ為に適度に転圧する必要がある。
普通ここまで雨水は充分地中に浸透するが、掘り起こした層から下にはほとんど移動しない。そこで余分な水分は暗渠排水設備で排水する
     2-1 乾燥気味の土壌を好む芝生も必要な水分の補給は必要である。その為芝根が一番活発に活動する層 地上から20cmの深さの層に有機質土壌改良剤と無機質土壌改良剤を混入する。有機質の改良材は特に発酵が完全な物を利用する。発酵が不完全であると土中の酸素を吸収してしまい、根をいためてしまう。また不完全な有機物に菌類を生じさせ芝生に悪い影響を及ぼす。無機質改良材は多孔質で保水と排水性を兼て要るようなものを使用する。使用量は有機、無機を合わせて土に対して20%を目安にする。
            使用する改良剤の特性は下記に
   3-1 植物が元気良く育成する為には、土壌が固体部分(土の部分)、液体の部分、気体の部分の割合がちょうど良くバランスが取れていることが必要です。
土の中の固体粒子を適当な力で結びつけ少し大きな塊にする為に、有機物と、シルト質(粘土質)が大きな役割を果たします。山口県の学校のグランドはほとんどマサ土で作られています。シルト質は極わずかしかし含まない為そのままの土では団粒構造はほとんど出来ません。そこで現地の土に粘性土を2~3%有機質改良材を混入し、団粒構造の形成を促進する。その事で保水力、保肥力、余分な水分の排水を高め、土の柔らかさを保つ事ができる。
締め固めによる3相分布の変化

技術的な課題 2

ここでは芝生の維持管理に付いて述べます。
校庭芝地化を進めていくための大きなハードルが芝生の維持管理の問題であると認識しています。
誰が、何時、どのようにして管理するの?
その費用はいくらぐらいかかって誰が負担するの?と言う問題です。
私達は手間も、費用も出来るだけかからないようなシステムとしての校庭芝地化を進めています。
皆さんがテレビでごらんになっている各種競技場のような、雑草の1本もない、きれいに刈そろえてあるようなグランドを求める事は無理です。維持管理費も芝生造成にもびっくりする様な費用がかかります。
 
 
 
横浜アリーナの芝グランド
維持管理だけで年間数千万円の費用がかかってます。
子供達が遊んだり、スポーツをするのに多少の雑草はまったく障害にはなりません。むしろ生物の住処として、トンボやチョウが訪れてくれた方が子供達は喜びます。
欧米の学校を調べているとき、校庭にいかに多くの生物がいるか?また呼べるか?と言うことが話題になっていました。芝生化された校庭は1つのビオトープと言うことができます。
また、学校のグランドという事で除草剤や病害虫の防除の薬の散布は出来るだけ避けなくてはなりません。それでも一年中緑が保たれる芝地化を進めています。
まず一番大事なことは学校の子供達や先生、PTAや、地域の皆さんに生きた芝生の良さを知っていただく事です。皆さんに理解を得る事だと思います。
このことが成功すれば、維持管理の問題に自然と道が開けてきます。子供達には校庭が芝生になることを早くから伝えましょう。子供達からいろいろの提案が出てきます。
芝生造成の段階から芝生が育つ様子を観察させよう!
芝生に対する思いがぜんぜん違ってきます。芝生を大事に使います。痛み方がぜんぜん違ってきます。東京の和泉小学校では、ほとんどの子が靴を脱ぎ裸足で芝生の上で遊んでいました。これを強制したことや指導した事は無いそうです。子供達が自主的にそうしてるようです。痛み方が少なければ維持管理の手間が軽減できます。
芝生に関わるということで子供達にも芝刈りや除草作業をを手伝わせましよう。生きた総合学習にもなります。子供達は沢山のいろいろな発見をします。
適度の踏圧は芝刈りの回数を減らします。年間数回程度で充分になります。
また、造成時に土壌改良で保水機能を向上させると真夏以外はほとんど潅水作業は必要なくなります。
病害虫の防除は今進めている方法ではほとんど必要ないと思われますが、自然が相手ですので絶対とは言い切れません。必要最小限の防除はありうることを理解してください。この場合情報を開示し皆様の理解を得る事が必要になってきます。
施肥の作業 これは丈夫な芝生にする為に絶対必要な作業です。
さて、誰がと言うことですが責任者は皆で話し合い決めるべきだと思います。最初に皆様の理解が進んでいれば、自ずと管理する為の緩やかな組織が出来上がっていくはずです。東京の和泉小学校のグリーンプロジェクトが参考になります。そうすると費用は年間数万円から数十万円で済むと思われます。
管理の仕方や方法、時期など専門的な事柄は私達にご相談下さい。
芝生のプロが揃っていますので適切なアドバイスをしていきます。
 一般社団法人山口県造園建設業協会
〒753-0831
山口県山口市平井634-1 K'sビル2階
TEL.083-924-5292
FAX.083-924-8091
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